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私たちは学習院で学んでいます。そこにはどのような意義があるのでしょうか。とりわけ、今日、国際社会が大転換の時期を迎える中で、学習院の一員として、国際文化交流の担い手となる女子のリーダーを目指すことの意義はどのようなことでしょうか。
英国のEU離脱や「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権の誕生が物語るように、冷戦終結以来、四半世紀に及んだグローバリズムはすっかり勢いを失い、国際社会は急速に多極化の時代を迎えつつあります。そのような中、日本は、これまでの国のあり方、特に国際社会とのかかわり方についての大幅な見直しが迫られています。
振り返れば、日本の歴史は常に国際情勢の変化に伴う国家改革の連続だったことが分かります。飛鳥時代の諸制度の制定も、大化の改新も日本を取り巻く国際情勢の急変がなければ起りえないことでした。その後も日本は国際社会の大転換に直面するたびに、国制を変え、時代の荒波を乗り越えてきました。今から150年前には、当時の欧米列強によるアジア進出を背景に、明治維新が起り、100年前の第一次世界大戦による国際構造の劇的変化は、日本を国際連盟常任理事国として世界大国へと押し上げました。72年前の敗戦では、占領下での大規模な戦後改革により国際政治の第一線を退きましたが、戦後の高度経済成長を経て先進国の一角を占めると、再び、世界の一員としての責務が求められるようになり、冷戦終焉後は、国際秩序を形成する先導的指導力が求められるようになりました。
私たちが学ぶ『学習院』は、公家の教育機関として幕末に京都で設立され、明治維新後は、国民の模範たる責任と義務を担う華族の子弟・子女の教育機関となり、近現代の激動の中で、常に日本国家と運命を共にしてきました。敗戦時には存立の危機に直面したこともありましたが、私立学校として再出発し、その伝統と精神を今日まで継承しています。
特に、女子学習院は「高雅風彩の教育」を目指し、「品格」「志」「嗜好」の高さを重んじました。「自ら聖人・賢人に、徳行を修めて世の模範に、武勇胆略をもって国威を海外に輝かす人に、科学文学を修めて世の智徳を進歩させようとする者に、国民の福祉に貢献したいとする者に」なることを目指すことが女子学習院の指針として掲げられ、そこには「国家の品格」を高めることを務めとして、自ら志操徳行を高くして国民全般を率いるという意気と実行力を示すという決意が込められています。
私たちは、こうした学習院・女子学習院の歴史を知り、改めて、国際社会が大きく変わろうとしている今日、学習院の女子学生として学ぶことの意義深さを感じています。これからの国際社会を日本の運命とともに生きる一人として、学習院女子として継承すべき精神や指針、大切にすべき心について考えたいと思います。