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グレートパワーゲームの新潮流~「米国復活」の衝撃と揺れ動く世界~

 

英国のEU離脱(Brexit)以来、国際構造の動揺は止まるところを知らず、米国のトランプ政権発足とともに、国際社会は巨大な転換期を迎えている。

 このような中、冷戦終結後から続いたグローバリズムが終焉を迎えようとしている。グローバル化の進展とともに、世界に散在した国際テロリズムの脅威、大量破壊兵器の拡散、経済格差の国際的広がり、先進国における産業空洞化等の問題はすでに収拾がつかなくなっていた。これらは、全人類が共通に直面する深刻な問題として、もはや、いかなる国家・国民といえども他人事として済まされず、その結果、国際社会における国家の位置づけと国際関係の性格も急速に変化し始めた。昨年巻き起こったBrexitや米大統領選挙におけるトランプ氏の当選はこうした世界情勢を反映している。

それに伴い、勢いを増したのが大国間のパワーゲームである。今日の北朝鮮やシリアやウクライナ(クリミア併合)をめぐる諸問題は、明らかに、アメリカ・中国・ロシア・欧州といった巨大勢力間のパワーゲームの様相を呈している。さらに、これまでグローバリズムの旗手であったアメリカは、「米国復活」を掲げるトランプ氏を大統領に選び「国益重視」の姿勢に大きく舵を切り返した。アメリカが変われば世界もまた変わらざるをえないのは当然である。世界は「普遍的価値」を追求する時代から、各国が自らの生存をかけて「自国の利益」の追求と「自助自立」を目指す時代へと突入している。

だからこそ、今、世界中の国々は日々アメリカの動きを注視し、国家のあり方を検討しているのである。日本もまたその例外ではない。各国が自らの生き残りをかけてしのぎを削る中、日本も自力で国益を守り、生存を図ることが一層問われている。そしてそれは、世界大国である日本にとって「一極として立つ」という覚悟を迫るものである。

 以上から我々は、国際社会の現状と世界主要各国の動向を探り、その今後を展望し、合わせて、日本が選択すべき国家戦略や役割をも再検討することとする。

 

 

 

北朝鮮問題…今年に入り頻発する核実験やミサイル発射実験がもたらす地域情勢の緊迫化。

シリア内戦…トランプ米政権が「化学兵器の使用」を理由にシリア政府軍の拠点を巡航ミサイルで攻撃。アサド政権の後ろ盾であるロシアの反発を招いた。

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